●【手をぎゅっと握る】——把握(はあく)反射
赤ちゃんの小さな手のひらに、人差し指をそっと置いたら、赤ちゃんがその指を握り返してきました。思わず頬が緩む瞬間ですね。これは赤ちゃんが産まれながらに持っている「把握反射」のなせるわざなのです。
赤ちゃんが糸くずを握りしめているので、指を開いて取ろうとすると、ますます固く握って取れない……こんな時は、手の甲にふれたり、すこしなでてあげると赤ちゃんが自分から手をひらくようになります。この時に手のゴミを取ってあげてください。
●【両手を広げる】——驚愕(きょうがく)反射
赤ちゃんのそばで金属製のお盆を落として大きな音が! 赤ちゃんは体をびくっとさせ、同時に両手を広げました。
また、抱っこからベッドに寝かせようとすると、やはり同じ動きをします。
なぜ赤ちゃんはびっくりすると、両手を広げるのか。これは「驚愕反射」というもので、赤ちゃん特有の反射行動なのです。
驚愕反射はママの胎内にいる3カ月ごろから出始めていて、初めての胎動はこの驚愕反射が原因と考えられています。
●【全身を複雑に動かす】——ジェネラルムーブメント
あおむけで手足をバタバタと複雑に動かす赤ちゃん。この動きは「ジェネラルムーブメント」と呼ばれていて、反射による運動ではなく、赤ちゃんが自発的に動いているのです。この運動は乳児期初期の中心的な運動で、自ら動くことで周囲に触れ、学習しているのだと考えられています。
●【足をなめる】——ボディイメージの獲得
仰向けに寝た赤ちゃんが、上げた両足を持って遊んでいます。もう少しすると、今度はその足を口へ持っていくようになります。これを見て慌てるママもいるようですが、あまり気にする必要はありません。
赤ちゃんは、これまでも自分の指や手などを舌でなめて確認してきて、今度は「これが私の足」と確かめているのです。こうすることで、赤ちゃんは自分の足先までのボディイメージを持てたことになります。
●【おもちゃを落とす】——“不思議”発見!
赤ちゃんはこの頃になると意図的におもちゃなどをテーブルから落としたりします。そうして落ちたあとのおもちゃを、じっと見たりしているのです。落ちたものがどうなるのかが楽しいのでしょうね。ママがひろいあげるとまた落とし、ママの動きを確かめようともしています。
目の前にあったものが消えてなくなる面白さ、本当に消えたのではなく下に落ちただけで、ちゃんとあるという発見! これに赤ちゃんは夢中になります。赤ちゃん自身が取り組んでいる実験の時間。そのうち、ものを落とすとママがひろってくれるのを楽しむようにもなってきます。あるいは、からかっているのかも? ママはあたたかく見守ってくださいね。
●【口元を見つめる】——動きと音の関係に注目?!
赤ちゃんは話をしている人、大抵は抱っこしているママになりますが、その口元を熱心に見つめる時期があります。何故なのか、理由はまだ明らかになっていません。
ただ推測できることはあります。赤ちゃんが口の形と、そこから出てくる音の関係について学んでいる、というものです。発声を始めたばかりの赤ちゃんは、ひとつひとつの単語やその意味については理解できません。でも口から言葉がでていること自体が、赤ちゃんにとって不思議なのかもしれませんね。
●【ママがいないと泣く】——状況理解の第一歩
今まで泣かなかった赤ちゃんが泣くようになる最大の原因は、ママが「自分のそばから離れる」ことに気づいたからです。しかも「そのうち自分のところに帰ってくる」ことはまだ理解できず、これが不安になって泣くのです。
ですからトイレなどでも赤ちゃんから離れるときは「待っていてね」、戻ってきたら「帰ってきたよ」と声をかけるようにしたいですね。これを繰り返すうちに、「いなくなっても必ず帰ってくる」ということがわかり、泣かなくなります。
以上のように、赤ちゃんのしぐさからはいろいろなことがわかります。生まれてきたばかりの赤ちゃんでも、実はとてもたくましい成長力をもっているのです。新米ママはとくに、慣れない子育てで手一杯かもしれませんが、どうぞ気持ちをおおらかに、ときには赤ちゃんのしぐさをみつめることで、我が子の成長を実感していただけたらと思います。
小西行郎 先生
小児科医。日本赤ちゃん学会理事長。同志社大学「赤ちゃん学研究センター」教授、センター長。「子どもの睡眠と発達医療センター」センター長。1989年より、文部省在外研究員としてオランダ、フローニンゲン大学にて発達行動学を学ぶ。1999年、埼玉医科大学小児科教授に就任。2001年、現在の東京女子医科大学・乳児行動発達学講座を開設する。同年、赤ちゃんをまるごと考える「日本赤ちゃん学会」を創設。赤ちゃんの行動、発達に関する著書多数。